◆「人間だということ、忘れられ」苦悩を吐露 この自伝は「でも今、私はここにいる」との一文で終わる。
本書を体感すると、この「でも」が重い。 そして強い。 ミュージシャンの自伝は、当人が覚えていることだけを いきなりの黒岩涙香である。 明治・大正期の新聞人にして作家で翻訳家。 大衆新聞「萬朝報(よろずちょうほう)」の生みの親であることや、そこに掲載された「巌窟王」「噫(ああ)無情」といった翻訳小説も思い浮か ◆母娘テーマ、落胆の種、象徴殺人への道 消えた猫、失(な)くした顔、境界越え、秘密の通路、地下世界、脱出口、象徴殺人、動物寓話(ぐうわ)といった村上ならではの要素が絶妙な形で再構成されている。